【連載コラム】広告代理店「消滅」か「進化」か。AI時代を生き抜くための軍師への脱皮 【第1回】その「運用代行」と「サイト制作」は、来年AIに奪われる。


「アクセスは順調に増えてるんだけどね……。でも、一向に問い合わせが来ないんだよ」
地元で贈答用の高級果物を扱う小売店の社長が放ったその一言に、38歳のアカウントディレクターである彼は、返す言葉を失った。
先月納品したばかりのホームページは、デザインも洗練され、AIを活用して記事も書き上げ、最新のSEO対策も施した。彼が自ら設定したネット広告も、狙い通りにクリックを稼いでいる。数字(データ)は嘘をつかない。アクセス数は確実に伸びているのだ。
だが、肝心の「売上」に繋がらない。
沈黙に耐えかねて言い訳を探そうとした彼の口を、社長の次の一言が完全に塞いだ。
「それにさ、これからのネット広告はAIで誰でも簡単に回せるらしいじゃない? ホームページ制作自体も、AIを使えば素人でも簡単に作れるって聞いたし。悪いけど来月からは、うちのパソコンに詳しい若いスタッフにAIを使わせて、自社でやってみようかと思ってるんだ。今までありがとうね」
「……」
丁寧な挨拶をして店を出たものの、5月の生温かい風がひどく冷たく感じられた。
テレビや新聞といったマス広告の時代から揉まれ、ネット広告の運用も誰より早くキャッチアップしてきた自負はある。だが、自分が汗水垂らして売ってきた「綺麗なホームページ」と「広告の運用代行」は、クライアントにとって、あっさりと自社スタッフとAIに代替される「作業」でしかなかった。
彼は冷や汗とともに、一つの残酷な真実に気づき始めていた。
「俺は、一体何を売っていたんだ……?」

【解説:なぜアクセスは増えても売れないのか?】

今回のストーリー、他人事だと思えるでしょうか。
広告代理店や制作会社の営業マンが陥る最大の罠が、ここに凝縮されています。
素晴らしいデザインを作り、AIを駆使して素晴らしい文章を作り、SEOや広告でアクセスを集める。
これはあくまで「戦術(やり方)」です。しかし、そもそも「よそと比べて、うちの何が優れているのか」「結局、お客さんにどんな良いことがあるのか」という、商売の根幹である『中身』を、代理店側もクライアント側も、そしてAIも誰も深く考えていなかったのです。
AIや社内の若手スタッフが簡単に代替できてしまうのは、この「箱作り」と「人集め」の作業だけです。
「とりあえず綺麗なサイトを作りましょう」「広告を回しましょう」。
この言葉から入る提案は、もうすぐ価値がゼロになります。
広告代理店の営業マンがこれから生き残るために必要なのは、綺麗な箱を作ることではありません。経営者の隣に座り、「あなたの会社の本当の強みは何か」を一緒に言語化し、泥臭くビジネスの根本を組み立て直す「戦略」の力なのです。
では、AIに代替されない「戦略家」への道は、どこにあるのか。
次回、どん底に落ちた彼に転機が訪れます。
(第2回へ続く)


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